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マークスタイラー買収!企業買収されると何が起こるか?

公開日: : 最終更新日:2017/08/26 ファッションビジネス


MARK STYLERマークスタイラー難易度の高いブランド買収。

かねてから噂されていましたが、マークスタイラーが中国系投資ファンド、シティック・キャピタル・パートナーズ(CITIC Capital partners)に買収されました。そして、新たに設立したMSインター ホールディングスの100%子会社になったようです。(2015年4月30日付け)

<参考>株主の異動について | MARK STYLER

<参考>マークスタイラーが中国CITICグループ傘下に、日本の2大ガールズ企業が中国資本に | WWD JAPAN.COM

前職では競合の一つであり、同じように買収された側の境遇にいましたので、感慨深いものがあります。「買収されるとどんなことが起こるんですか?」とご質問もあるので、経験も含めご紹介します。

 

マークスタイラー買収で考えられる企業買収後の3ステップ

EMODAエモダEMODA

「マーキュリーデュオ(MERCURYDUO)」「ムルーア(MURUA)」「エモダ(EMODA)」など19ブランドと約170店舗を展開するマークスタイラー。ターゲットとなる一部の20代前半の女性からは、ブランド名だけでなく、「マークスタイラー系」といったコーポレートブランドとしての認知があります。以前は「マルキュー系」と呼ばれていましたが、戦略的にターゲットを広げるために駅ビル・ファッションビルへ出店拡大し、最近は「ガールズ系」という括りで呼ばれています。そのゾーンでの有数の企業が買収をされたのです。

しかしながら、大前提として、買収後に事業運営がうまく進むケースは少ないです。それは、どの業界も同様のことですが、特にアパレルの領域は水モノの要素が強いため難易度が高いです。

一般的に、買収後に行われるのは下記の3ステップです。

1.経営陣の入れ替え

2.戦略・方針の転換

3.事業部門責任者など要職の入れ替え

私の前職でも同じようなことが起こりましたが、それぞれ詳しくみていきましょう。

 

1.経営陣の入れ替え

経営者

買収後、最初に行われる可能性が高いのは、経営陣や社長の入れ替えです。オーナー社長が企業を売却する企業買収の場合、社長交代はセットのようなものですが、それ以外の買収は多くの場合、新たな株主が用意した社長や取締役が送り込まれます。企業として順調に成長している過程で、資本だけ変わる場合は、成長を継続させるためにも特に手を付けない場合もあります。

一般的に、買収される側の企業の従業員は、買収された知らせを事前に知らされることは少なく、当日ニュースなどで知ることも多いです。朝礼で買収されたことを知らされるとともに、社長が交代することも知らさせるということは珍しいことではありません。これは、会社が変化していく序章です。

 

2.戦略・方針の転換

戦略・方針の転換

株主は直接的に企業運営をしていくわけではないので、まず経営陣を入れ替えます。その後、「戦略や方針の転換」という舵をきるわけです。

これは、どの程度の転換が起こるかはそれぞれのケースによるはずですが、既存の企業文化すら否定されて全く逆の戦略になる場合もあります。まさに、前職の場合はこれに該当します。こちらも同様に、成長過程の企業の資本だけ変わる場合は、成長継続のためにも特に手を付けない場合もあります。

また、このあたりでEC事業に関しても話題に上がるでしょう。

マークスタイラーの全ブランドを取り扱う自社ECサイトRUNWAY channel WEB STORE(ランウェイチャネル ウェブストア)は、ファッションECとしても有数の大規模サイトです。

RUNWAY channel WEB STORERUNWAY channel WEB STORE

売上は公表されていませんが、ある程度名の通ったファッションモール型のECサイトよりも売上規模が大きいと聞いています。直近では、全盛期に比べると売上は大きく減少しているとも聞いていますが、それでも企業としては戦略的な位置づけのチャネルであることは間違いなく、今後の動向は注目です。

私の前職の場合は、内製化して急成長していた自社ECサイトを買収後にフルアウトソースに戻すという、EC事業の大きな戦略・方針転換がありました。もし、マークスタイラーのEC事業においても転換があるのであれば、それは更なる成長のための転換であることを期待しています。

 

3.事業部門責任者など要職の入れ替え

組織変更

ファンド経由で採用した外部から新たなメンバーや、新たな経営者と過去仕事を共にしていて使いやすいメンバーを既存の責任者と入れ替えるということは起こりえます。実際や、旧経営者の実力と影響力が強ければ強いほど、経営陣が後退した時点で、コアメンバーが自ら会社を離れる方が多いでしょう。

マークスタイラーでも同様のことが起きていたかもしれません。

同社の場合は、創業オーナーである恵藤会長が2014年9月に退任した時が大きな転機でした。その前後あたりから、ブランドの低迷は耳にしており、9月以降に戦略や方針転換があったのかもしれません。2015年に入ってから、主要ブランドのプロデューサーやディレクターが退任しました。

<参考>マークスタイラーの恵藤会長が退任 事業の選択と集中が課題 | WWD JAPAN.COM

<参考>松本恵奈が「エモダ」を卒業!「ダズリン」の近デザイナーも退職、チームでMD・企画を強化 | WWD JAPAN.COM

引き続き人の動きはある可能性は考えられますが、今後の動向を見守りたいと思います。

 

M&A

戦略的なM&A、海外資本の参入、事業継承など、企業買収は増加傾向になります。企業買収後に、業績が回復したり、グループのシナジーが生まれるという事例は少ないと聞きますが、もちろん成功している企業もあります。

近年、ガールズマーケットは市況がよくないだけに今後の変化が気になりますが、企業としての活力を取り戻し、マーケットの流れを変えてくれることを願います。

また、マークスタイラーのブランドディレクター卒業生の動きが出てきていたり、RUNWAY channel部門の卒業生によるfithが好調なので、こちらの動きも目が離せません。

<参考>松本恵奈が会社設立し、新ブランド「クラネ」スタート 「30代の新しい時代を作りたい」 | WWD JAPAN.COM

<参考>後発で急成長するfifth(フィフス):注目のファッションEC・通販サイト(4)

 

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川添 隆

川添 隆

デジタル・コマースグループGM | デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長メガネスーパー | ビジョナリーホールディングス
NewsPicksプロピッカー、デジタルハリウッドオンライン講師、文化服装学院 非常勤講師、日経デジタルマーケティング連載、ECzine連載、LINE大使(自称) ||| EC事業、オムニチャネル推進、デジタルマーケティング・コミュニケーション、デジタルを活用した店舗支援を統括し、他社のEC・オムニチャネルのコンサルティングにも従事。これまではファッション・アパレルに従事し、現職含め3社のEC事業売上を短期間で2~4倍にしてきました。 ≫ プロフィール詳細・お問い合わせはコチラ

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