在庫確保→MD戦略へ:役割が変わり始めたファッションEC先行予約【2】
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最終更新日:2018/10/18
ECノウハウ・実例
単純な「先行予約」の時代は終わりつつある。
先日、ある方から「アパレルブランドのECでの予約」について質問をいただたので、前半後半に分けて「予約」についてご紹介します。ECまわりで何かしら支援に関わる方には、ぜひ理解していただきたいです。
前回の記事では、「先行予約」がどのような販売方法なのかやその種類を解説しました。今回は、主流となった「先行予約」がどのような役割に変わってきているのかご紹介します。
在庫確保→MD戦略へ役割が変わり始めたファッションEC先行予約
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)
現在、セール期間以外は1年中「先行予約」が実施されている状況です。「先行予約」の実施目的はモールECサイト(小売り)とメーカー(事業者側)とでは思惑や趣旨が異なると捉えています。それぞれ解説いたします。
ファッションモールECサイトとしての「先行予約」の思惑とは
モールECサイトとしては、同じブランドを取り扱っている競合サイトよりも早くユーザーの財布をおさえたいという思惑が大きいでしょう。
先行予約がメジャーでなかった頃は、例えばZOZOTOWN限定やファッションウォーカー限定など「限定」にすることでサイト内の露出を確約する方法をとっており、モールEC側も強気で交渉をしていました。一方現在は、メーカー側が「単独サイトで予約をとるより、複数サイトで予約をとるほうが数字が良い」ということを知ってしまったので、モールEC側としては他のサイトよりもいち早く先行予約を実施するために、「スケジュール交渉と社内調整」がポイントになっているようです。
メーカー・事業者としての「先行予約」の思惑とは
ここでもまた、自社ECサイトとモールECサイトとでは「先行予約」は思惑は異なります。
■自社ECサイトでの実施の場合
ブランドのファンが多いことから、今シーズン打ち出したい商品を、いち早く確実に確保してもらうための「サービス」という側面と、「ユーザーの財布をブロック」という側面の思惑があると捉えています。
■モールECサイトでの実施の場合
ベンチマーク施策になりつつあります。ここでは競合ブランドとのユーザーの取り合いが自然に発生するため、先行予約をやらないとモールECサイト内でのユーザーの取り込みが難しくなってきます。例えば、アウターの先行予約を実施しなかったために、商品入荷後の売上がとれないという事例はあります。予約をせずにひきつけても、よっぽどの商品力がない限りは、「ユーザーの選択肢」に入らないということだと捉えています。
メーカー・事業者における「先行予約」の戦略
メーカー内でも担当者によって思惑も変わってきました。店頭販売日とEC販売日がずれたり、商品入荷後の在庫確保が難しいECの企業の場合、EC担当者としては、先行予約は絶好のチャンスになります。まず、基本的に予約を取った分の在庫は確保できる。また、唯一サンプルなどを使って商品撮影ができ、実際の販売日は店頭と合わせられるので、予約分プラスαの在庫確保が期待できるという意図があったりします。
一方、ECのシェアが高く、企業戦略の一部になっている企業の場合は、先行予約はユーザーの反応を見る絶好のテスト期間になります。全社の初回発注の色配分や追加発注のジャッジに使ったりしていると聞いております。こういった企業は、片手で数えられるほどしかありませんが、これが理想的な「先行予約の役割」だと考えています。
「他のブランドに乗り遅れないための先行予約」「EC担当として在庫を確保するための先行予約」から、「全社のMD戦略に活かすための先行予約」へと役割を変えられるかが、企業姿勢そのものを表すことになるでしょう。
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