小売でECスクラッチ開発を選択する必要なし!?:ECカートシステムの選び方【5】
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最終更新日:2017/08/26
ECノウハウ・実例
そのEC、スクラッチの必要ある!?
前回は、大型パッケージシステムのメリット・デメリットを比較しました。今回は、スクラッチのメリット・デメリットをEC担当者目線で比較し、最後にまとめをご紹介します。
スクラッチの比較
各ECシステムのメリット・デメリット
この比較はこれまで私が見聞きしたことや、実際に経験したことを基にして作成をした主観的なメリット・デメリットの比較です。今回はスクラッチについてご紹介します。スクラッチとは、ゼロから構築をしていくということです。一般的には数十億~100憶以上のレベルの大規模ECサイトで採用されることが多いですが、中小規模でも採用の可能性が有ります。パッケージ以上に開発者の依存度が高くなる分、慎重な判断が必要です。
スクラッチ開発
スクラッチ(ゼロから全て構築)を選択するならこんな企業がオススメです。
・ECサイトの規模としては、年商で最低50憶以上を想定
・自社の事業やサービスに合わせてゼロから構築したい
・特殊な業態・商材で、パッケージシステムはで対応できない
・社内に開発のチームがある
メリットとデメリットは以下です。
■メリット
・全てが自由
・社内開発・更新が可能なのでスピードが早い
■デメリット
・システム連携は都度開発
・社内のリソースに依存する(開発スキル、過去の開発の継承)
・社内開発担当者な永続的な情報収集や育成・マネジメントが必須
・セキュリティは保証がないため対策が必要
日本のトップランクに入るようなECサイトはほとんどがスクラッチ開発でしょう。例えば、ZOZOTOWNや楽天市場のようなモール型EC、現在のユニクロはスクラッチと聞いています。他にも、中古買取のような特殊な業態のECはスクラッチ開発だったりします。私自身も特殊な業態で、スクラッチ開発のECサイトの運営をしていたこともあります。企業として、ECをスクラッチ開発したい場合は、NTTデータやアクセンチュア、NEC、富士通、日立のような大手ITベンダーに発注するのが一般的です。
一方、中小規模であっても、特殊な業態ということを除いて、スクラッチを採用するケースを耳にすることがあります。「意外とスクラッチでつくったほうが早く、安く構築できるよ」というような例です。私自身、実際に目の当たりにしたことはないのですが、こういったケースは気を付けるべきです。それは、「価格にしか付加価値がないもの」に本当の価値があるか?ということ。物販でも同じことが言えますが、易きに流れてはダメです。
小売(リテール)やメーカー(SPA)でスクラッチを選択する必要があるか?
これは対談企画ができそうなほど、個々で捉え方が異なる話題です。
私は、小売(リテール)やメーカー(SPA)の場合に関しては、スクラッチ開発を選択する必要はないと考えています。それは、安定性やセキュリティなどのリスクが高く、初期の開発ベンダーや社内スタッフに終始依存してしまうからです。もちろん、パッケージ側で手に負えないという場合も出てきますので、スクラッチ開発をせざるを得ない場合もあります。また、万全な体制であればスクラッチは良好に機能すると思いますが、いずれにしても一定の企業規模が必要になるでしょう。では、スクラッチ開発を決断する場合に「必要になるもの」とは?自身が決済するつもりで考えてみてください。
私がもしスクラッチ開発を選択するのに必要なのは、「社内の開発チーム」と「社内で永続的にずば抜けていられる開発者」が手配できることだと考えます。パッケージ採用の場合もパートナーが肝と言いましたが、スクラッチの場合は、社内チームや担当者が重要だと考えます。
開発自体を外に依頼するにしても、スクラッチの場合は比較対象がなくなってきます。プログラミングレベルでの細かい議論ができないと、進捗管理や工数の妥当性が把握できないはずです。そのため、「社内の開発チーム」は必須と考えます。
そして、特に社内で開発や改修を行う場合は、担当チームのスキルに依存をしてしまいます。また、担当者がシステムのトレンドを追いつけなければ、ECサイトの拡張性が担保できなく可能性が高いです。日本を代表する大手企業でも、ECサイトを見ると、スマホ対応ができていない、デザインが古いという事例も見受けられます。その観点でも、システム開発担当は、そこそこのメンバーを複数揃えるよりは、圧倒的なスキルと経験を持った人が一人でもいたほうが良いと聞いたことがあります。そのため、「社内で、永続的に、ずば抜けていられる開発者」は必要だと考えます。
いくらでも開発予算を使える環境にあっても、人の目処が立たない間は、スクラッチ開発を選択する必要はないと私は思います。
次回は、ECシステムの選び方のまとめとして、この連載1回目で「企業としてのEC事業に対する意向」のそれぞれに対して、どれがオススメなのかを振り返りたいと思います。
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