システム連携を最適化する4つのポイント:システム見直し3つのトレンド【3】
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最終更新日:2017/08/26
ECノウハウ・実例
ECの注目で求められるシステムの見直し。
2015年3月にに、ECzine Day 2015のパネルディスカッションで登壇させていただきましたが、その時のディスカッションテーマとして準備していたものの、お話しできなかった内容をブログで紹介します。
第3弾は、システム見直しのトレンドの中でも「ECと外部システムとの連携方法」について私見ををご紹介します。
外部システムとの連携を最適化する4つのポイント
「EC起点でのシステム連携」と言えば、連携の先は多種多様です。基幹システム、メールマガジン配信ツール、※WMS、オウンドメディア、ファッションモールECサイト、ショッピングモール型EC管理システム、スマートフォンアプリ、BIツール、CRMツール、DMPツールなど連携先は年々増えています。この傾向は、特化した外部サービスが増えたことと、EECに多面的な役割を求められていることが起因しています。
※WMSとはWarehouse Management Systemの略で「倉庫管理システム」のことです。
これらの連携元となるのは自社ECですが、基本的に連携方法は企業ごとにチューニングが必要というのが大前提。「今後、自社ECを強化したい」と考えるのであれば、必ず何かしらのシステム連携を求められるので覚悟が必要でしょう。私の経験上、以下の4つがポイントだと考えています。
1.目的・予算感を明確にする
2.現状の連携方法の確認
3.許容できる範囲を明確にしておく
4.ひとつひとつ決め込む!ジャッジする
それぞれ詳しく解説していきます。
1.目的・予算感を明確にする
そもそもシステム連携によって何を実現したいのか、そのためにいくらまでなら投資できるかを明確にしておく必要があります。社内外含めて、特に基幹系のシステムに関わった経験が長ければ長い人ほど「完璧」を求める傾向があり、連携の要件定義を進める中で、目的と違う方向にいきかねないからです。すなわち、「連携による目的達成」と「連携の完璧さ」は必ずしもイコールにはなりません。また、完璧を求めれば求めるほど、要件が細かくなり、連携のためのコストが跳ね上がります。
ただし、あくまでも予算に関しては、「感」というのがポイントで、最初は上限金額の設定をするイメージでよいと思います。「やりたい要件は◯◯だが、ここまでしか出せない」と明確に伝えるとの、「やりたい要件を出して一回見積もりましょう」だと出てくる金額も、結果的なプロジェクトのスケジュールも変わってきます。
常にたちかえることができる目的と予算感は明確にしておくことが重要なのです。
2.現状のルール・連携方法の確認
新たに連携するには、双方のシステムのルール(決まりごと)を確認することは必須です。例えばECリプレイスにあたり、すでに連携しているシステムと連携し直すような場合は、
どういう意図で現在の連携方式をとっているかの背景とともに、データベースのレイアウト、連携の頻度、経路、通信の方法等を確認しておく必要があるでしょう。
実際に要件定義の段階に入ると、ECシステムベンダーから必ず確認をされます。この段階で大事なことは、システムのルール(決まりごと)の概要を理解しておくということです。プログラミングのレベルの詳細なことまで理解する必要はありません。システムに関わった経験が少ない人は、話にのれなくなってきますが、絶対にあきらめてはいけません。
それは、ここで理解しておくことが、次からのポイントである「許容できる範囲」や「ジャッジメント」に関わってくるからです。必ず、わからないことは徹底的にその場で質問し理解を深めておきましょう。
3.許容できる範囲を明確にしておく
これは文字通り、連携において「自社としてどこまでOKか」ということです。開発のスケジュールや通信方法など、連携はこれによって金額が大きく変動するといっても過言ではないでしょう。
代表的な事例は「バッチ処理の頻度」です。バッチ処理とは、ある一定期間でデータを集め、一括処理することです。このケースとして、アパレルECの主流でメガネスーパーでも実施している「ECサイトでの店頭在庫表示機能」を具体的な例として解説します。
この場合の基本系は、店舗ごとの在庫情報を、基幹システムからECシステムへバッチ処理で送ります。以下が主要な情報(データ)です。
・店舗情報:店舗コード、店舗名、店舗詳細ページのURLなど
・在庫情報:商品コード、在庫数など ※EC側の商品マスタの持ち方により変動
ここでバッチ処理の頻度が論点になりますが、基本は基幹システム側のタイミングに合わせることが多いでしょう。基幹システムはPOSシステム(POSレジ)から売上(在庫の減算)をバッチ処理を行っているので、その頻度に合わせるのが基本です。仮に、ECで見せる店頭在庫情報を30分更新したいが、基幹システムが1時間更新という場合は、基幹システムのバッチ処理を変更する必要があり、コストが跳ね上がります。
また、バッチ処理は頻度が短くなればなるほど、コストが上がる傾向にあり、いわゆるリアルタイムにすると大幅にコストが増加するので留意しておきましょう。
4.ひとつひとつ決め込む!ジャッジする
上記の1~3を基にして、要件定義連で仕様を決め込んでいく、すなわちジャッジしていきます。連携は機能改修に比べれば、選択肢は少ないのでジャッジが必要な項目自体は少ないです。しかし、一つ一つのジャッジが開発コストに影響する重要なジャッジだと言えます。それぞれジャッジをしていく上では、上記の1~3以外に、判断基準が必要です。判断基準は企業によって異なるかもしれませんが、私の場合は下記の2つを総合的に見てジャッジをしています。
1.選択肢がある場合、どちらが利益に近いか?
2.後々、変更が可能か?(どの程度のコストがかかるか?)
例えば、段階的に変更が可能であれば、最も導入しやすい方法で連携して結果を出してからグレードアップしていきます。
分からないからと言ってベンダー任せにせず、必ず自らがジャッジをする。ジャッジをするには情報と理解が必要なので、ジャッジが多ければ多いほど個人としても、ECとしても飛躍的に成長していくことは間違いないと考えています。失敗を恐れず、一つ一つジャッジしていきましょう。
▼他の記事はコチラ
無理しないスマ―トフォンアプリ活用とは:システム見直し3つのトレンド【1】
POS・基幹システムの3つの問題点:システム見直し3つのトレンド【2】
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川添 隆

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