アドテック東京2015レポート:情報収集だけでなく行動すべし【3】
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最終更新日:2017/08/26
EC・ビジネスメソッド
アドテック東京2016行きますか?
初回は主にデジタルマーケティング、前回は主にECの本質的なキーワードをご紹介しました。最終回は広告業界やそのクライアント側の今の課題が読み取れるキーワードに注目です。本記事の最後に、アドテック東京2015の感想もご紹介します。
アドテック東京2015(ad:tech tokyo)は本質的メソッドの宝庫
今回のアドテック東京では「自社のユーザーの嗜好や行動に合わせた」が共通のキーワードだと私は感じました。それを踏まえて、今のアドテクノロジー活用における広告提供側や、デジタルマーケティングを行うブランドホルダー側の課題が読み取れるキーワードがありました。私なりの解釈も含めてご紹介します。※微妙な言い回しが異なる場合は容赦ください。
消費者を刺激するCRMの本質
巨大な会員組織となっているクラブパナソニックの取り組みと、加藤公一レオさんによる単品通販の極意を基としてユーザーを刺激するCRMとは何か?ということを語られたセッション。EC業界でも著名な加藤さんのメソッドが色濃く表された1つのキーワードがありました。
「消費者を刺激するCRMは逆張りにある!」株式会社売れるネット広告社 加藤 公一レオさん
「レスポンスの魔術師」の異名で、EC業界、特に単品通販業界では知らない人はいないというほどの知名度と実績のある加藤公一レオさん。私自身、加藤さんのセミナーを聞くのは初めてでしたが、思わず即発注したくなるほど強烈なお話でした(笑)。
その真髄とも言えるのが「逆張り」、すなわち「一般的なセオリーとは逆の施策をやる」ということです。加藤さん本人は「自分の人生も逆張り!」と言うほどの強固なメソッドになっているようです。シンプルなメッセージだけに奥が深いです。例えば、メールは全配信ではなく、掲載URLまでユニーク化した個別メールを送る。クーポンは全員に見せるのではなく、注文確認画面で表示するといった施策で、定期購入へ引き上げていくということ。やった方がいいというレベルではなく、やらないから売れないサイトなんだ!という言い切りは潔い。
私がこのキーワードから読み解くのは、「逆」ということが重要なのでなく、「常識を疑い、しっかりと考えて丁寧に商売に取り組みなさい」ということだと感じました。一般的なセオリーや常識が存在すると、何も考えずに施策をやったり、それと違うことをやることを恐れたり億劫に思ったりというよう流れができることがあります。加藤さんの施策やメソッドは一見大胆に聞こえるものの、ユーザー側が気持ちよく買えるような状況や、商売人としていかに利益を生むかといったことを考え抜いた上で出来た1つの完成形だと思います。私自身も改めて肝に銘じます。
アドテクノロジー最新潮流とその舞台裏
今回のアドテックで唯一のアドテクノロジーに関するセッション。Ad Exchang(アドエクスチェンジ)という1インプレッション単位で売買が行われるプラットフォームと、RTB(リアルタイムビット)という広告のインプレッションが発生するたびに競争入札と配信が決定される取引方式によるエコシステムが主流となったディスプレイ広告。日本独特の課題に関しても議論があり、ここは押さえておきたいという2つのキーワードがありました。
「日本のスマホアプリはゲーム攻略に依存している分、ブランド広告までにはいっていない」株式会社fluct 小澤 昇歩さん
提携メディアの広告収益最大化および広告効果の向上を図るSSP(Supply Side Platform・サプライ サイド プラットフォーム)としての広告配信プラットフォーム「fluct」を展開されている小澤さんだからこそ、日本のスマホ広告の実情がわかるキーワードです。アメリカとの対比で話されていましたが、アメリカは色んな業界のスマホアプリが台頭しているため広告配信面が多様で、広告の内容も多様である。一方、日本のスマホアプリはゲーム攻略ものにユーザーが集中しているため、広告の内容は制限されてしまうということです。
EC視点では、アメリカと比べると日本の方が圧倒的にスマホ経由の売上比率が高い状況で、ブランドサイトなどのEC以外のメディアもスマホ経由での閲覧比率が60~70%を超えてきていることを言うまでもありません。効果的なデバイスで、広告を出せないというのはもどかしい状況です。LINEやSNS広告は1つの突破口ではありますが、全体からするとそれも一部でしかないということでしょう。メディアや事業者は広告配信の観点からもスマホアプリをどうしていくかということを、今後考えていかなければならないと感じました。
また、この中で次のような面白いエピソードのご紹介もありました。「広告需要が高いこの11月末~12月にかけては、SSPを経由せずに入札調整の電話が鳴りっぱなしで、電話を受けてから手動で調整している。SSPの意味がない(苦笑)。」エコシステムが確立しているとは、媒体や代理店、事業者それぞれの対応も含めて、まだまだ改善の余地がありそうです。
<参考>アメリカで急伸するモバイルコマースの実態 | freshtrax | btrax スタッフブログ
効果を最大化するマーケティング・リソースの適切配分
世界的なブランドホルダーの日本法人のデジタルマーケティング担当の課題に対して、企画・提案・運用を行う代理店・コンサルティングの方々がアドバイスするというハイレベルなお悩み相談となったセッション。その中で2つのキーワードがありました。
「認知度は高いが純粋想起が弱い。もっとも相関の高い指標は何か? 」アウディージャパン株式会社 井上 大輔さん
私自身ブランドマーケティングに弱いので、こういった言葉はハッとさせられます。例えば、アウディというブランド名を知らない人はほとんどいない。だけど「高級外車と言えば?」と尋ねると、ベンツやBMWという回答が出てこない、アウディが出てこないということです。そのため、ブランド名での検索数を純粋想起の指標にしていると井上さんはおっしゃっていらっしゃいました。
ECでリスティング広告をやっていると、ブランド名や企業名での検索数、すなわち指名ワードでの検索数は、急成長企業でない限り増えるものではないということを前提としてしまいます。ブランドマーケティングというもう一つ大きな目線で考えると、認知だけでなく「○○と言えば?」ですぐに名前が出てきて検索という行動につながるか?そのためにはどのようなプロモーションが必要になる。マーケティング担当としては当たり前のことだけど、今後、全社のビジネスに関わる必要があるEC担当者はこういう視点を持つ必要があるな感じさせられました。
「 最終的には[経験と判断]=[経営判断] 」アタラ合同会社 有園 雄一さん
これは「長い目で見てROIをどう正当化する?」という話題から出てきたキーワード。私も同じようなことを感じることはありますが、ROIでは表現しづらい施策や、短期的なROIで見ると無しだけど中長期的に見ると今から取り組んだ方がいい施策って必ずでてきます。ECなら最終的に利益で回収すればいいが、もう少し間接的なデジタルマーケティングになると、よりこの話題は悩みになりやすいと想像します。
そんな中、運用型広告のコンサルティングやアトリビューション分析、定点調査の分析・モデリングなど、定量化→評価→改善のプロフェッショナルの有園さんが、「いくらシミュレーションしようとも、最終的には経験と判断、すなわち経営判断で決めなきゃいけない」と言われたのは納得感があり、ホッとしました。
やはり、過去に前例がないような新しい取り組みは、いくらシミュレーションをしたとしても、実際にやってみないとわからない。いつ成果出るかを含めて。検討の素材が出揃ったところでは、ある意味経験によるカンのようなもので見極めて、やるかやらないかを決めることこそ経営判断の役割であるとも言えます。
メガネスーパーの代表からは、いけるかいけないか微妙な判断をする際には、それによって被る最大のリスクを明確にしておくことが大事だと常々言い聞かされています。リスクを併せて提示するということも、判断を仰ぐ上では大切なことの1つだと考えます。
最後に2日間の参加費は約15万円と高価です。ただし、デジタルマーケティングにおける国内外のトッププレイヤーの話や最新事例が直接聞けたり、ネットワーキングパーティでつながりを作ることができる貴重な機会として1度は参加する価値があると思います。そして、自分自身が「井の中の蛙大海を知らず」という状況だったことを痛感することができます。特にEC担当者にはぜひ1度は行ってみていただきたいです。
最後に、12月23日に加藤公一レオさんのFacebookで下記のような名言が投稿されていました。
私は今まで1万人を超える方々の前で講演を行ってきたが、セミナーを聞いた人で実際に行動に移す方は10%以下。90%以上の人は単純にお勉強をしにきた凡人だ。
世の中で成功を望んでいる人はめっちゃ多いが、実際に行動を起こす人は驚くほど少ない。
マーケティングで成功するには行動がすべてだ!
<引用>加藤 公一レオFacebook
まさにおっしゃる通りです。何より大事なのは、収集した情報を基に行動を起こしていくということを忘れてはいけません。
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