実店舗とECのより良い関係:オムニチャネル実現への道【1】
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最終更新日:2017/08/26
オムニチャネル
全社として総額上がればよくない?
私個人の前提としては、「オムニチャネル」のようなマーケティングのバズワードは大嫌いです!それは、商売の本質として、どのチャネルであろうが自社の利益が増えればよいし、お客様側はどのチャネルでも同等のサービスを求めているからです。
とは言え、そう簡単に割り切れない分野です。改めて、実店舗(既存ビジネス)とECのより良い関係について解説します。
実店舗(既存ビジネス)とECのより良い関係
私自身、「オムニチャネル」関連の取材やセミナーでお話しさせていただく機会がありますが、よく冒頭に質問されるのが「御社にとってECとはどういう位置づけでしょうか?」ということです。
EC事業の中でも、自社ECサイトと出店型のモールECサイトは役割が異なるため、次のように位置付けています。
■モールEC:そのモールを好むユーザーを刈り取るチャネル
■自社EC:自社で直接展開する実店舗や販売チャネルを包括し、自社のお客様の購入やロイヤルティを高めるチャネル
それぞれの位置づけについて解説します。
モールEC:そのモールを好むユーザーを刈り取るチャネル
楽天市場
モールECは、サイト自体に集客があるものの、購入情報が取得しにくかったり、メルマガや広告などのマーケティングの効果検証がしづらい、また販売方法はモールEC側のシステムに依存するなどのデメリットがあります。例えば楽天市場に出店しているなら、とにかく楽天を利用するユーザーに購入してもらうことのみを目指します。もちろん、ユーザーに選択肢を設けるうえでは、コーポレートサイトやブランドサイトにモールECサイトへのリンクを掲載する方法もありますが、メガネスーパーや前職のクレッジでは、自社ECに注力するために我々からお客様に意図的にモールECをオススメすることはほとんどありません。
自社EC:全チャネルを包括し購入とロイヤルティを高めるチャネル
メガネスーパー公式通販サイト
自社ECはWEB上の「単なる1つの店舗」という存在だけではなく、買い物する時間や場所の自由度が高いため、「全店舗をサポートして包括するような店舗」と位置付けています。そのため、ECと実店舗の両方を合わせて、個人を特定できるお客様1人1人が、1回でも1円でも多く購入してもらうこと、そしてブランドとの結びつきを強めてもらうことを目指します。
ただし、サポートと言っても、社内の中で「守り」ではなく、「攻めと守り」を両方をやる必要があると考えています。他社では、社内の反発を避けるために「守り」として位置付ける企業も見受けられますが、経営側から見れば、ある程度投資や改善をすれば実店舗以上の成長率を見込める「飛び道具的な存在」でです。社内の反発を恐れずに、必ず「攻め」の意識を忘れず、戦略・実行に落としていくことが重要です。そのため、ECzineの連載で書いたように、PLは分けるべきだし、予算も自分たちでつくる必要があるわけです。
ECも実店舗も1つのブランド・企業
お客様から見ると、ECも実店舗も1つのブランド・企業です。ただし、ECと実店舗とではそれぞれ長所と短所があり、提供できるサービスレベルも一部異なります。価格やキャンペーンなど同じにできる部分は最大限に同期し、あとはお互いの長所で補い合うのがより良い関係だと考えています。
これを全社の戦略にうまく取り込んでいるのが、最近注目を浴びるヨドバシカメラです。
<参考>ヨドバシの通販がアマゾンを超える?「来店客にネットで買わせる」巧みな戦術で急成長 | ビジネスジャーナル
また、ECや実店舗のような販売チャネルだけでなく、製品やマーケティングなどあらゆる部分を1つのブランド・企業として戦略的に展開しているのは「アップルコンピュータ」です。これらの事例は、考え方から実際の取組みが非常に参考になります。
ここで、ECチャネルに関して注意が必要なのはモールECです。企業としての戦略上、「ECも実店舗も1つのブランド・企業」としてオムニチャネル化を進める場合、「EC=自社EC」として企業側は捉えています。しかし、お客様側は、ZOZOTOWNやマガシークのような委託型のモールECサイトに関しても、「同じブランド=他の店舗と変わらない」と捉える方もいるということです。物理的な制約があるため連携できる領域は一部に限られますが、お客様側の目線に立って、モールEC経由のカスタマーサポート対応やキャンペーンの実施に活かす必要があるということを忘れないでください。
オムニチャネルの話題になると、真っ先に顧客情報・ポイントの統合やそれにまつわるシステムの話になりますが、まずは「ECも実店舗も1つのブランド・企業」というお客様側の目線に立って、1つ1つの施策の改善を行っていくことこそがオムニチャネルの第一歩だと考えています。
次回は、「EC起点で見たオムニチャネル」について解説します。
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