パルコ林氏、アーバンリサーチ坂本氏がオムニチャネルを語る。人とデジタル・テクノロジーのより良い役割づけとは?
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最終更新日:2017/08/26
オムニチャネル
Web広告研究会セミナーでのパネルディスカッションの前編。
テーマは『オムニチャネル実現に向けたユーザー体験の構築から社内調整のノウハウまで』。登壇者は以下のメンバー。
・(株)パルコ 執行役 林 直孝氏(WEB/マーケティング部、メディアコミュニケーション部担当)
・株式会社アーバンリサーチ WEB事業部 部長 坂本 満広氏
・(株)メガネスーパー デジタル・コマースグループ ジェネラルマネージャー 川添 隆
※以下、敬称省略
前半にそれぞれの事例を20分ほど発表がありました。
アーバンリサーチ最新事例:TREND EXPRESS
後半は私がモデレーターとしてお話を聞かせていただきました。本来は3人で話す鼎談でしたが、進行は必要だと思ったのでモデレーターをさせていただきました(笑)
来場者の方々がデジタルで完結させがちで、リアルの巻き込み方などを特に聞きたいというオーダーがあったので、それを意識しで議題設定をしました。ディスカッションの中で、私が気になった部分を抜粋してレポートします。
開始前のトーク:エンプロイ・エクスペリエンスについて
川添:アドテック東京2016オムニチャネルセッションで出たキーワード。小売の場合は、顧客体験を考える前に、店頭スタッフがスムーズに使えたり、業務がラクになったり、店頭スタッフの体験に重きを置く必要がある。本部が決めた取組みを店頭でやろうとしたときに、全く使われなかったり、接客に集中できないのは本末転倒。
坂本:現場から「こういうことをやりたい」という意見が先に挙がってくると、その後が非常にやりやすい。そういう意見を出しやすい環境づくりや、意見を拾うことも大事。
リアル(店舗)⇔デジタルの戦略
川添:私も含めてこの3社は店舗が起点となって、デジタルを活用している。基本的に、デジタル活用をすることありきではない。その中でのデジタル・テクノロジーの位置づけやオムニチャネルの定義などを聞いていきたい。
オムニチャネルの中心にすえるものは?
林:24時間パルコの中心にあるものは「接客」。パルコ自体は商品を保有していない分、モノではなくテナント出店いただいているスタッフさんの「接客」がリアルとデジタルをつなぐ要素になる。過去にECをやっていたころは、中心にあったのは「商品」だった。ECをやめたタイミングで再構築するきっかけになった。
坂本:アーバンリサーチで中心にあるものは「サービス」「データ」。店舗とECそれぞれで購入いただいていてそれぞれでデータを保有していた時代。さらにお客様へのサービスをより良くするためには、一人のお客様が何をご購入いただいているかのデータをつなげる必要があった。
テクノロジーはどこまで活用すべきか?
林:仙台パルコのナビ―とPepperの導入事例。Pepperは優秀だけど移動できないからナビ―を導入。ロボットが得意なことの1つは単純作業を多量に処理すること。テクノロジーが活きる。人ができることとと、テクノロジーができることを役割づけしていくことが重要。
坂本:台湾のショールームストアをやってわかったことは、店舗がコミュニケーション、売上はECといった具合に機能のすみわけができるということ。今後に関しては、タブレットを使った接客までは考えている。ただし、テクノロジーを店舗に導入したことで接客ができなくなるというような状況はつくってはいけない。
台湾のアーバンリサーチ ショールームストア (map)
店舗とEC・デジタルの橋渡し
川添:リアルな店舗とEC・デジタルの橋渡しをするためには、経営、本部スタッフ、店頭スタッフ含めて多くの関係者を巻き込んだり、どのデータを活用していくかを決めていったりする必要がある。その中で気を付けていることなどを聞いていきたい。
パルコさんの場合は、テナント出店しているブランドの巻き込みが重要。どう巻き込んでいるか?
林:カエルパルコ立ち上げ時に大切にしたことは、各ブランドのスタッフの方に使ってもらえるような仕組みにすること。仮に売上につながるとなっても、操作が難しいと使ってもらえない。それで、ECとしては登録がカンタンなわStores.jpと一緒にカエルパルコをはじめた。パルコ全店で働いていただいている約2万人の中から、カエルパルコを使いこなしているスタッフさんの動画を作成して、他のテナントさんにもノウハウを共有している。
どのようにデータを活用しているか?
坂本:どういう物が良く売れているか?というECのデータをモノづくりに反映している。いわゆる、需要予想。例えば、普通なら初回で3,000枚しか作らない商品を、ECのデータを活用することで5,000枚生産するジャッジをして、入荷すぐに完売するというようなイメージ(当初は10,000枚行こうと提案したが)。追加発注の枚数の決定に関しては、かなりの精度で当たっている。MDのジャッジを手助けするという部分で、ECの予約や初速の販売実績データは活きている。
オムニチャネルにおけるアプリ不要論も出る中、パルコさんはアプリにAIを搭載し、もう一段踏み込まれた。その意図や活用方法とは?
林:POCKET PARCOは、CLIPの多いと最終的な購入につながりやすいことがわかっている。CLIPを増やすには、パーソナライズでブログの情報を出した方がよい。お客様ごとのブランドの相関を見るためにAIを活用している。
一方、アプリでできないことを見えてきた。CLIP→Check in→Conversionが見え化できたが、来店(Check in)して買わない理由まではわからない。それをIoTを使って、データ化することに取り組んでいる。Wi-Fiを使って、館内での導線データを収集。これが多く集まると、ある程度の理由が特定できる。さらに、天候の情報を付加する。このデータを使って、帰りそうな前にプッシュ通知を送ったり、接客のトークに活かすことで、購入につなげていくことに取り組んで行きたい。
大切なことは、人が得意なこと、デジタル・テクノロジーが得意なことを見定めて、役割づけをしていくことの重要であることを痛感しました。また、デジタルやテクノロジーは万能ではなく、取れないデータは必ず出てくる。それをいかにリアルや他のテクノロジーで補うかという観点も必要ですね。
やはりこの2社は小売を代表する先進的な取り組みを、本当にスピーディーやられていることを再認識。さらに、成功パターンを見つけ、次のステージへの進化に取り組まれる姿勢こそ、トップランナーたる所以だと思います。私自身もぜひ見習わせていただきます。
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