無理しないスマ―トフォンアプリ活用とは:システム見直し3つのトレンド【1】
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最終更新日:2017/08/26
ECノウハウ・実例
ECで求められるスマホアプリとは?
2015年3月に、ECzine Day 2015のパネルディスカッションで登壇させていただきましたが、その時のディスカッションテーマとして準備していたものの、お話しできなかった内容をブログで紹介します。
第1弾は、システム見直しのトレンドの中でも「スマートフォンアプリ」について私見ををご紹介します。
スマ―トフォンアプリの4つの利点を再確認
ECやWEBサイトにおけるスマートフォン(スマホ)経由の流入や購入が、PCを超えているのは皆さんご存知でしょう。例えば、私が以前勤めていたレディースアパレルでは、2013年春時点で売上におけるスマホのシェアは約90%で、WEB広告の進化が全く追いついていないということもありました。
では、スマホのブラウザ検索が減少傾向にあり、スマホアプリの利用やアプリマーケット内での検索するユーザーが増えているという話は聞いたことがありますか?
<参考>検索がアプリで行われる傾向が増、Googleなどのシェアは低下傾向に | TechCrunch Japan
上記は米国のデータによるものですが、日本においても「中高生がブラウザではなく、まずApp Storeで検索する」という話を以前聞いたことがあり、非常に驚いたことを覚えています。スマホアプリの重要度が増しているのは間違ありません。
スマホアプリの利点は下記の4つだと考えています。
1.プッシュ通知
2.位置情報との連動による情報配信
3.行動履歴(購入までのアクション)が取得できる
4.One to Oneの情報配信
それぞれどういった特徴や可能性があるでしょうか。
1.プッシュ通知
私自身、LINE@で痛感しましたが、プッシュ通知というのはスマホアプリ最強の機能だと言えます。
現在は、スマホアプリが増えてきたので、プッシュ通知自体をブロックするユーザーが増えてきていることも事実でしょう。LINE@に関して言えば、開封では単純比較しづらいものの、クリック率で見ればLINE@>メルマガというのは揺るぎがありません。それは、プッシュ通知のパワーだと捉えています。
また、最新動向としては、待望のWEBサイトでのプッシュ通知が可能になりました。iPhoneでの対応も待ち遠しいですが、これは非常に画期的なことです。
<参考>ウェブのプッシュ通知、何がそんなにすごいのか? | Tender Surrender
いずれにしろ、以下2~4の利点を活かすのも、このプッシュ通知なので、今後は「精度」が求められていくでしょう。
2.位置情報との連動による情報配信
屋外のGPS情報をはじめ、ビーコンの活用や、WI-FIを使うor使わないインドアGPS(屋内位置情報)などこの領域は賑わいをみせています。スマホアプリを介して、屋内外に関わらず位置に合わせた情報配信ができる技術は整っています。例えば、「LINE Maps for Indoor」のようにショッピングモールやファッションビル内での館内案内といった活用事例もあります。
ただし、この領域はテクノロジーは整っていながらも、成果につながる有効な事例は聞いたことがなく、現時点だとLINE@の方がまだ優位なようです。
私自身も「位置に連動した有効な情報とは?」と考えますが、位置だけでなくその時の体調を含めた状況、気分、嗜好性といった定性的な軸が必要なのではと考えています。今後、そういったソリューションも含め、位置情報×スマホアプリは発展の余地があります。
3.行動履歴(購入までのアクション)が取得できる
ヤマダ電機や無印良品など、スマホアプリ先進企業は、店頭のCRMの一環として活用を始めています。来店ポイントなどでアクションを入れれば、ECのように訪問から購入の有無までの計測でき、プッシュ通知でフォローアップもできるようになるのです。
EC側の視点では、訪問者数が数値化されているのは当たり前のことですが、実店舗では入店カウンター(計測器)が導入されていない限りは入店数は数値化されていません。
それが、来店ポイン付与のための端末やチェックイン機能があれば、入店後にポイント付与した人数は数値化され、さらにある程度の付与割合がわかれば、大まかな入店数と購入率も把握が可能になります。例えば、「ポイント付与50人/日、購入人数25人/日、目視での端末利用は5人に1人」という場合は、「入店数が250人/日、購入率が10%」ということがわかります。これを販促施策の検証に利用したり、グルーピングによるプッシュ通知での来店促進に活用したりできるということです。
4.One to Oneの情報配信
実店舗とECをもつ企業がスマホアプリを通じて最終的にやりたいのは、One to Oneすなわちユーザー一人一人に合わせた情報配信でしょう。
顧客DBや購入履歴、またサイト閲覧履歴とスマホアプリの行動履歴を集約し、CRMツールやDMPツールなどとの連携することによってOne to Oneで情報配信するための仕組みやサービス自体はすでに整っています。
CRM、One to One配信の重要なポイントは、どのようにセグメントを分け、それぞれにどのようなオファー内容を、自動的な配信として運用を回して、効果検証と改善ができるかだと捉えています。仕組みとしてはいわゆる「キャンペーンマネジメント」ものです。
この領域に関しては、DBの整備・連携とシステム導入が前提ですが、何よりも「企業側の仮説」が重要だということを忘れてはいけませn。
無理をしない!最初から全てを活かす必要はない
湯水のように投資ができる企業であれば別ですが、最低限効果が出やすい「1.プッシュ通知」という利点を活かして、WEBアプリ(スマホアプリを通じてWEBサイトを読み込む)から始めるというので売上への効果は充分検証できるでしょう。無理をして完成されたスマホアプリにする必要はないのです。それで、いける!という手ごたえたあるならば、2~4の実施やネイティブアプリ(ゼロベースでの開発)への切り替えを検討すればよいと思います。
また、最近ではLINEビジネスコネクトをスマホアプリの代わりにするという手もあります。どうしても、アプリは開発費用や維持費もかかるため、LINEビジネスコネクトへのシフトも少しずつでてきていると聞きます。
例えば、ZOZOTOWNの場合は、スマホアプリも展開していますが、先日LINEビジネスコネクトをスタートし今後CFM施策を展開していくようです。
<参考>ZOZOTOWNのLINE公式アカウント復活:CFM戦略による活用方法とは!? | YAMAYOKO.com
いずれにしろ、ゲームやLINEなどの登場によりユーザーとしてはスマホアプリが欠かせないものになっていますが、反面、企業としてのスマホアプリの活用はまだまだ進んでいません。
2013年当時、前職のブランドでは無理をせずWEBアプリでスマホアプリを展開していましたが、月間の自社EC売上の数%がアプリ経由になっていて、効果が高いことを実感していました。こういった事例もなかなか耳に入ってきませんが、ECでのスマホアプリの活用は避けて通れないので、引き続き注目と言えます。
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