アドテック東京2015レポート:EC業界トッププレイヤーのキーワードとは!?【2】
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最終更新日:2017/08/26
EC・ビジネスメソッド
EC担当視点でのアドテック
前回ばかり主にデジタルマーケティングの本質的なキーワードをご紹介しました。今回もそれを踏まえつつも、EC業界のトッププレーヤーが集ったセッションのキーワードもご紹介します。トレンドを背景とした本質的なキーワードに注目です。
ECはアドテック東京2015(ad:tech tokyo)でも注目領域!?
今回のアドテック東京では「自社のユーザーの嗜好や行動に合わせた」が共通のキーワードだと私は感じました。もちろん、これはEC業界でも同じ動きで、WEB接客やAIの活用が徐々にトレンドになってきていますよね。
EC業界のトッププレーヤーの金言とも言うべき、本質的なキーワードがあったので、私なりの解釈も含めてご紹介します。※微妙な言い回しが異なる場合は容赦ください。
トライ&エラー:マーケッターのあくなき挑戦
トライ&エラーを繰り返す、専門店やデジタルマーケティングのトッププレイヤーが、「Microsoft FUTURE VISION」で表現されている2020年の世界が訪れることを逆算して、今マーケッターがやるべきことを議論されたセッション。その世界とは、インターネットで全てのことができる世界。私自身の中では、アドテック東京2015のベストセッションです。その中で3つのキーワードがありました。
Microsoft FUTURE VISION
「あの世界に広告はない」キリン株式会社 上代 晃久さん
自身もマイクロソフトに在籍されて、数年前にあの動画を見ていらっしゃった上代さん。この言葉に私はハッとしました。実際に動画を見るとデバイス上に広告らしきものは出てきませんし、一連の流れで広告っぽい広告が出てきたらウザいですよね。数年後の世界にはコテコテのデジタル広告は恐らく存在しないのです。
動画には出てこないですが、さはさりながら、情報を検索する行為はなくならないはずなのでリスティング広告はあるでしょうし、自分がユーザーだとするといい具合にオススメやお知らせをしてくれる情報は欲しいです。まさにその議論になり、恐らくこの動画の世界では、様々な企業同士が連携をして自然なコンテンツをつくるような時代になるだろういう話になりました。例えば、現在の企業間の連携やアライアンスは、Win-Winでお互いに利益を享受できるかが基準になっていますが、恐らくあの世界では、1企業として情報をユーザーに伝え、利益を享受するために、他の企業との連携が前提になっているのかもしれません。まさに、大きなパラダイムシフトが起こることを頭に入れておかねばならないと強く感じたキーワードでした。
「お店の役割は個にアプローチできること、それは変わらない」株式会社キタムラ 逸見 光次郎さん
「EC関与売上」という新たな指標を採用し、ECを使って全社の売上、経営の効率化を図っておられる業界のトップランナー、キタムラの逸見さん。自身のキャリアが店頭スタートで、現在、ECの責任者としても定期的に店頭に立ち、オムニチャネル(同社では人間力EC)施策のオペレーションの運用や、お客様の使い勝手に問題がないか検証をされています。店頭とEC・テクノロジーを熟知した逸見さんならではの言葉ですね。
あの動画のような未来が来ようとも、実店舗の強みや役割は変わることがないというのは、私自身も非常に共感します。「本質的に来店してもらえるだけの価値があるのか?」ということは、現在でも未来でも常に自社に問うべき命題だと感じました。
「今後、設備投資からマーケティング投資にシフトしていけるのでは?」オイシックス株式会社 西井 敏恭さん
ECもデジタルマーケティングも熟知する西井さん。これまでの日本企業における成長への投資と言えば設備投資がメインで語られている。あらゆる業界でデジタルマーケティングが浸透してくると、全てがクリアに数値化されていくから、数値が見えにくい既存の投資からマーケティング投資にシフトしていくのでは?という内容です。自身の会社でも、マーケティングのコンサルタントをやられている西井さんらしい言葉で、私も共感をします。
デジタルマーケティングやECに踏み込めない、理解が薄い経営者や企業幹部はまだまだ多く、そのほとんどは「デジタルは実物が目に見えないわかりにくいもの」と捉えています。特に小売りやメーカーに多いです。確かに物理的に目の前に見えないですが、一連のアクションが数値化されるので最もわかりやすいもんです。
今後、今とは比べものにならないほどのデジタルマーケティングやECのビッグウェーブが来ると私自身は確信していますが、その時はあらゆる業界や事業規模を問わずデジタルマーケティングやECをやっていることが当たり前でしょう。その時代で勝つために、今からトライ&エラーを繰り返し、自社としてのノウハウを貯め、継続的にアップデートしておくことが重要だと感じさせられるキーワードです。
Eコマース成功の鍵を徹底分析:市場の変化と今後の展望
化粧品、総合ファッション、レディースインナー・下着、健康食品といった多品目通販、単品通販の両方トッププレイヤーが、外部パートナーに求める要件を提示したセッション。一言でECと言っても、商材や業態が異なれば手法や課題も異なりますが、その中で4つのキーワードがありました。
「セグメントしても[商品×ブランド]になるとカバーできない」株式会社スタートトゥデイ 清水 俊明さん
私自身、お話をお聞きしてみたかったのがZOZOTOWNのCFM戦略を指揮する清水さん。CFMとは「Customer Friendship Management」の略で、ZOZOTOWN特有の顧客関係管理の概念の「いわゆるCRM」で、「お客さまと友達のような関係になること」という意味します。そのCFMを突き詰めていった清水さんの金言は、ファッションECのCRMの一つの答えだと感じました。
通常のCRMのように属性などでセグメントをしてメール配信をしていたようですが、例えば同じ20代女性でもファッションの場合は、ブランドと商品が軸となるのでザックリとした形でしかターゲティングができないというのが課題になっていたようです。それを現在のイベント・ベースド・マーケティングというユーザーの購買・行動の変化を検出して、お客様毎にOne to Oneに近いアプローチをしたことでCVR10~30%という驚異的な数字に改善したとのこと。
言うのは簡単ですが、聞いているだけでも複雑さがわかりますし、一般的なマーケティングオートメーションでも実施は難しいはずです。システムやCFMを内製化しているZOZOTOWNだからこそできるマーケティングであり、究極的なキーワードだと感じました。
「ABテストは確かに改善できるが、クーポン施策の方が劇的に購入率が上がることがある」株式会社ピーチ・ジョン 安住 祐一さん
ファッションEC業界の中で、デジタルマーケティングの鬼とも言うべき安住さん。Adobe、ClickTale、Optimizely、Rtoasterの4社交えてグロースハックチームを作っているとのことで、そのチームを指揮したり、データを見るだけでもかなりの力量が必要になります。その中で、半年のABテストの回数はなんと67回!そんな安住さんが、「売上のインパクトの観点なら、ABテストよりもクーポンなどのようないわゆる販売関連の施策の方が購入率が上がる」と言われたのを聞いて、私自身も激しくうなずきました。
あくまでも、ABテストとキャンペーンなどの販売施策は同じレイヤーの施策ではありませんが、ややもすれば「ECサイトの売上アップにはサイト内のABテストは必要」という論調もあったりします。前回のデータ活用も同様です。安住さんの言葉には、「継続的なサイトの改善は大事。ただし、常に自社のECサイトで何の施策が売上インパクトが高いかを把握しておくべし」という意味が込められていたのではと解釈しました。
「スマホだと定期購入引き上げが弱い」味の素株式会社 竹盛 晋也さん
シニアをターゲットとして健康食品という商材で単品リピート通販を展開されている竹盛さん。 この領域では定期購入への引き上げと離反防止が最重要施策となります。例えば、定期購入者の離反を少なくするために健康関連情報をメールで配信したり、同梱物として月刊誌いれたり、サプライズでプレゼントを同梱したりするそうです。最近はスマートフォン経由の注文が増えているようですが、他のデバイスや電話などに比べて、スマホだと定期購入引き上げがイマイチ弱いそうです。
私自身、単品通販に関して詳しくなく、前職ではスマホ比率が約90%とスマホ重視型のスタンスなだけに、単品通販ではこのようなことが起きているのかと単純に気づきとなりました。その詳細な要因は特定できていないようですが、スマホ経由の注文は初回が衝動買いだったり、お試し買いの人が多いのでは?という仮説を持っているとのこと。スマホの話ではないですが、メガネスーパーでもコンタクトレンズ定期便は、ECよりも店頭の方が獲得率が高いです。デバイスやチャネルごとの得意不得意を見極めて対処方法を用意しておく必要があるという気づきをもらったキーワードです。
「ストア部門・EC部門どちらで売上をとってもよい、両方で獲得する」株式会社ピーチ・ジョン 安住 祐一さん
ECのトッププレイヤーで、ECと店頭との連動(いわゆるオムニチャネル)を促進しているトッププレイヤーは、「企業側としてどっちのチャネルで売るか?といった話をしている場合ではない」というような、経営者的な視点と危機感をお持ちです。そして、「オムニチャネル」というトレンドキーワードを嫌うことも共有しています(笑)。
安住さんは常々この言葉をおっしゃっていますが、何度聞いても身に染みる言葉で、先ほどのデジタルマーケティングやECに対する踏み込みが浅い・理解が薄い経営者や、保身に走っている事業責任者の方々にぜひ聞いていただきたいキーワードです。
今回は初日の2セッションについてご紹介させていただきました。残りのセッションに関しては、次回ご紹介します。
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